たまには本の話題を。
少し前に稲田将人「戦略参謀 経営プロフェッショナルの教科書」を読了。
経営企画に関する内容は良いと思うのだが、ストーリーが若干陳腐化してるかなぁと思う。
事業部立て直し辺りまでは面白かった分、その後のグダグダ感がとても残念。
そう思った理由は以下。ネタバレがふんだんに入っていますがまさか読む人はいないと思うのでよしとする。
まず主人公の若手社員と外部から採用された経営企画室長が中心となったストーリーなのだが、どちらも迂闊すぎ。
会社で禁止されている事項(取引先に奢ってもらう)を若手社員が「知らなかった」と言ってる辺り、コンプライアンスのかけらもねぇなと思うし、身の周りに気をつけろと言われたその日に(経営企画室長が)社長秘書を2人きりで飲みに誘う辺り「アホか」と思う。
また、罠のかかり方が間抜けだし、かけた方も徹底的に抵抗したいのなら悠長にやりすぎ。
今どき怪文書て...twitterでのツイート一発で終わる気がするのだが。
(2013年に出版されたものとしては余計陳腐だ、と言っています。20年前ならありそうだけど)
あと、この作品のテーマが経営企画(だから戦略参謀)だったので、企業の不振の原因をトップ層の責任にしたのだが、そこが変わるだけでそんなに業績変わるかね?とも思う。
経営企画なので会社全体の問題点を洗い出し、それを改善するための(会社全体に向けた)戦略の立案を柱にしてほしかった。
実際オーナー企業の場合この本に書かれているようなことは発生しているのかもしれないが、企業戦略を説く本としてこのシチュエーションはちょっと限定的かな、と...。
同様の内容の本として三枝匡氏の「V字回復の経営」があるが、こちらの方が企業全体として改革しようとしている様が描かれているし、リアルに感じる。
(コマツの事例を基にしたストーリーなのでリアルなのだが)
採った施策の結果はどれも「排除」になっていたのもどうかなぁと思う。
「抵抗勢力=悪どいことをしている」という安易な図式にしたのがそもそもの間違いなんだけど。
実際はそうじゃない抵抗勢力の方が多く、抵抗勢力は彼らなりの正義(それもある一面で見れば真理であるもの)を振りかざすので、経営企画としてはそれをいかに上手に軌道修正して全体として同じベクトルに持って行くかがコンサル(あるいは経営企画)の手腕の見せ所だと思うのだが。
時期として半沢直樹が流行ったからだろうか?だとしたらテーマとしてちょっと違うよね、とは思う。
作者が言いたいことは各章末にあり、それを肉づけるためのストーリーなんだけど、それが陳腐だと真に言いたいことも陳腐に見えてしまう。
内容としては身になるかなと思って後輩に勧めようかとも思ったが、内容が残念なのでやめた。これを真に受けられると困るので...。