ゼネラリストとスペシャリスト

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会社に入ってしばらくして、まだまだ業務を完全にこなせていない我々に対して会社の重役や人事部は次のようなことを言っていた。

『何でもできる』は『何でもできない』ことと一緒だ
T型人間(あるいはπ型人間)になりなさい
自分が担当している業務の専門家になりなさい

上記を読んでもらえると分かるように、会社はスペシャリスト(あるいは特定分野におけるプロフェッショナル)を目指すことを要求していた。全員に対してである。
それぞれの言葉の意味は他の会社でも言われているであろうからあえては書かないが、とにかく「専門家になれ」と言われてきたのだ。
またその傾向を支援するための仕組みもできてきた。経済産業省(というかその外郭団体のIPA)が出しているITSS(ITスキル標準)に準拠したプロフェッショナル認定制度を作ったりしてきている。

がしかし、昨年あたりからその傾向が変わってきている。曰く

「特定の技術分野でなく広い視野を持ちなさい」
「他の業務も見なければならない」
「○○を知らずして××は語れない」

要は「ゼネラリストになりなさい」と言っているのである。しかもこれも全員(特に若手社員に対して)である。
個人的にはスペシャリストに偏った組織はろくなことが起こらないので(特に顧客に接するところでは)、ゼネラリストを育成していく必要があると思うのだが、どうもこの「十把一絡げ」で考えているところが気になる。そもそも、全員ゼネラリストな会社は以前言われていたように「何もできない」会社になると思う。
我が社の場合、入社後2年間同じ部署で働き、その後否応なく別の部署に異動する。
同じような業務を行うのであればよいが、そうでない場合も多いようである。
例えば私が今いる部署は主にネットワークの設計やデータセンタにおける構築を行っているのだが、ここから開発に行った場合新しいスキルは身につくかもしれないが、前の部署にいるときの技術も中途半端(特に入社後2年間の技術なんて本当に大したことがない)、その後2年でまた他の部署に移るので、2番目の部署で学んだことも中途半端...となる。
2年間その部署に在籍することにより身に付くスキルや実施されるカリキュラム・研修体系が各部署で準備されており、社員もそれを参照できるようにしていればよいのだが、今のところそういうものは存在しない。
結果若手社員は「4月からどこで働くことになるんだろう...」と不安になり、現在の業務もそこそこに同期の間で「君のところは何をしているの?」と情報収集に明け暮れる。

私は実際に人材育成戦略に携わっているのではないので正しいかどうかは分からないが(むしろ分かる人には教えてもらいたいのだが)、若い社員の育成のために複数のキャリアパスを示した方がよいと思っている。
具体的には下記の通り。

1. 育成期間終了後のキャリアステップを大きく分けて「スペシャリストコース」と「ゼネラリストコース」の2つに分けること
2. それぞれに対して育成カリキュラム(もちろん目安)を作成し、コミットメントを作って取り組んでもらうこと、それに対してフィードバックすること
3. 上記の2つのコースは何年目かの節目で(本人の意志で)変更できること
4. 上記の2つのコースに進むことが給与体系に(明らかな)大きな差を生じる結果にならないようにすること

1.はどちらかに偏るのは間違っているし、どちらも必要なポジションだからである。
2.は育成カリキュラムをはっきりと示すことにより社員の目標管理を行うことができるし、そこから効果測定を行いカリキュラムの修正を行うことができるからである。
3.は異動先の部署で「あ、この仕事面白い。もっとやってみたい」と思う可能性があるからである。
4.はコースによる偏りを減らすためである。これは育成だけでなく人事給与体系の改革も必要だろう(我が社の給与体系の話は書くのやめとこう...)。

もっと社員は(というかうちの会社の社員か?)自分のキャリアに対して意識した方がよいと思う。
自分は会社でどのような価値を発揮するのか、どう貢献するのか。
でないと、そのうち淘汰されてしまうんではないだろうか。